生成AIによる世界的な電力逼迫危機 ('26/7/13号)

生成AIの技術革新が急速に進む一方で、その膨大なデータ処理を支える「電力」の確保が世界的な重要課題となっています。国際エネルギー機関(IEA)の試算によると、ChatGPTなどの生成AIに対する1回あたりのクリーンリクエストは、従来のGoogle検索1回と比較して数倍から約10倍程度の電力を消費するとされています。同機関の予測レポート「Electricity」では、データセンター、AI、および暗号資産セクターによる世界的な総電力消費量が、2022年の約460テラワット時(TWh)から、2026年には1,000TWhを超える規模へと倍増する見通しが示されました。これは日本全体の年間電力消費量にほぼ匹敵する規模であり、テクノロジーの進化が物理的なエネルギー網を逼迫させる構造的なリスクが浮上しています。

勝者は電力インフラ企業?

この空前のデータセンター建設ラッシュに目を付けた世界中の投資家から、現在、強烈な資金が流入しているのが「電力インフラ企業」です。AI主導のシステムを稼働・維持するためには、膨大な高電圧電力を安定して供給・変圧する設備が不可欠であり、電線に用いられる「銅」や、送電網に不可欠な「変圧器」の製造メーカーへの需要は世界的に供給不足が深刻化しています。かつては低成長と見なされていたオールドエコノミーである重電インフラや電線産業が、AIブームの恩恵を直接的かつ最も大きな恩恵を受ける産業の一つへと変貌を遂げており、市場における「勝者」として注目を集めています。

そして資源獲得競争へ

さらに、大手テクノロジー企業(ビッグテック)が掲げるカーボンニュートラル目標の達成と、24時間365日停止しない安定電源の確保という二大要件を満たすため、「原子力発電」への期待と投資がこれまでにない高まりを見せています。米国をはじめとするグローバル市場では、MicrosoftやGoogle、Amazonといったメガプラットフォーマーが、次世代の小型モジュール炉(SMR)の開発支援や、原子力発電所からの直接的な電力購入契約(PPA)を相次いで締結しています。最先端のアルゴリズムを競うAIの主導権争いは、いまや「物理的な電力インフラとクリーンエネルギーをいかに迅速に確保できるか」という、極めてリアルな資源獲得競争へとシフトしているのです。