消えゆく街の本屋さん ('26/6/15号)
全国の書店数がついに1万店を下回りました。出版文化産業振興財団(JPIC)などの調査によると、2025年度末時点の書店数は9,993店となり、地域によっては書店が1店舗も存在しない「書店ゼロ自治体」も増加しています。背景には、スマートフォンの普及による情報取得手段の多様化や、電子書籍市場の拡大、ネット通販の浸透などがあります。また、出版科学研究所によれば、2025年の紙の出版物(書籍・雑誌)の推定販売金額は前年比4.1%減の9,647億円となり、1976年に1兆円を突破して以来、初めて1兆円を下回りました。紙媒体を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増しています。

変化する書店の役割
しかし、こうした状況は単なる衰退ではなく、書店の役割そのものが変化する転換点とも捉えられます。従来のように「本を並べて販売するだけ」の業態では、品揃えや価格、利便性の面でネット通販との競争は容易ではありません。一方で近年は、カフェや雑貨、ギャラリー、音楽イベントなどを組み合わせた複合型書店が注目を集めています。書店員による選書やテーマ性のある売り場づくりを通じて、単なる購買ではなく新たな発見や学びを提供する「提案型書店」へと進化する動きが広がっています。
書店が生き残るためには
特に実店舗ならではの強みとして注目されるのが、「セレンディピティ(偶然の発見)」の価値です。インターネットでは目的の商品を効率よく探せる一方で、思いがけない本との出会いや、地域住民が交流するコミュニティ空間としての役割は実店舗ならではの魅力です。今後の書店経営に求められるのは、単に商品を販売することではなく、知的体験や文化的価値を提供することにあります。書店は「モノを買う場所」から「時間や体験、発見を楽しむ場所」へと変化しており、その価値を高められるかどうかが生き残りの鍵になるでしょう。



