野党3党による連立政権の可能性も? ― 高市トレードの巻き戻し【コラム】

10月10日に行われた自民党と公明党の党首会談では、連立政権の継続をめぐって大きな動きがありました。公明党の斉藤鉄夫代表は「政治とカネの問題」への自民党側の対応が不十分だとして、26年間続いた連立の枠組みからの離脱を正式に表明しました。連立解消は1999年以来初で、戦後の政党政治における大きな転換点となります。背景には、裏金問題などの影響で自民党への信頼が揺らいでいることに加え、公明党の支持層から「自民党追随への不満」が高まっていることも指摘されています。

次の政権シナリオと数の論理

衆議院(定数465)における勢力図を見ると、自民党は現在196議席、公明党は24議席を持っています。公明党が離脱した結果、自民単独では過半数(233)を大きく下回ることになりました。一方、立憲民主党(148議席)、日本維新の会(35議席)、国民民主党(27議席)の3党が連立すれば、合計210議席となります。これにより「野党3党による政権樹立」も視野に入ります。ただし、首班指名投票で過半数(233)を確保するには、この3党以外の野党の協力も不可欠となり、連立交渉の難航は避けられません。もし野党間で調整がつかず首相候補を一本化できない場合は、自民党単独で現在の議席数よりも更に少ない「少数与党・高市政権」が誕生する可能性が高まります。

グラフ作成:武田真美

市場への影響 ―「高市トレード」の巻き戻し

最近の円安・株高は、高市早苗総裁の掲げる「積極財政+金融緩和維持」への期待が背景にあり、アナリストの間ではこれを「高市トレード」と呼んでいます。実際、10月2週目のドル円相場は1ドル=153円台、日経平均株価は4万8500円を一時突破しました。しかし、連立崩壊で政権の不安定化リスクが高まれば、こうした期待は急速に後退します。野党連立が実現すれば、金融引き締めや財政再建を重視する路線に転換する可能性があり、市場は「円高・株安」方向へ巻き戻される恐れがあります。また、野党3党の政策理念には大きな隔たりがあり、政権が発足しても短命に終わるリスクが指摘されています。いずれのシナリオでも政治的リスクが増大し、日本の金融市場は一段と不安定化する局面を迎える可能性があります。