消えゆく秋 ー 気候変動が生活と産業に与えるインパクト ('25/9/29号)

今年の夏は、日本の気候観測史に大きな爪痕を残しました。国内の歴代最高気温ランキングTOP5をすべて更新するという異常事態となり、各地で「史上最も暑い夏」と体感されたのも当然です。気象庁のデータによると、全国の平均気温は平年を大きく上回り、猛暑日(35℃以上)の日数も観測史上最多クラス。さらに10月も全国的に気温が高くなりやすい傾向が続く見通しで、本来9月~11月に訪れる「秋」の存在感がますます薄れています。

産業と暮らしへの深刻な影響

しかし、秋が短縮されることは単なる季節感の問題にとどまりません。例えば農業分野では、稲や果物、野菜が適切に育つ期間が短くなることで品質や収穫量に影響が出やすくなります。観光産業でも紅葉シーズンが短くなれば集客に打撃を受ける可能性が高く、アパレル業界では秋物ファッションやブーツなどの販売が低迷し、在庫リスクを抱えることになります。これらは単体の業界にとどまらず、物流や小売を含むサプライチェーン全体に波及するため、日本経済に広範な影響を及ぼしかねません。

急激な寒波と「秋をあきらめる」未来

さらに気象庁の長期予報では、12月に入ると急激に気温が下がり、平年より寒くなる地域が増えると予想されています。つまり「快適に過ごせる秋」がほとんど存在せず、猛暑から一転して冬へと突入する「極端な季節変化」が今後の新しい常態になる可能性があります。私たちはこうした異常気象を一時的な現象として捉えるのではなく、生活や産業のあり方を見直す必要があるのかもしれません。秋を楽しむ時間が減るという現実は寂しいですが、その裏にある気候変動の影響を正しく理解し、備えていくことが求められています。