「国民食」カレーにも及ぶ物価高の波 ('25/7/7号)

「カレーが嫌いな日本人はいない」といった言い回しを耳にすることがありますが、それもあながち誇張ではないかもしれません。
全日本カレー工業協同組合の調査によれば、日本人は年間平均約79回カレーを食べているとのこと。これは週に1〜2回の頻度であり、家庭料理としての定着ぶりを物語っています。

その背景には、家庭での調理の手軽さに加え、レトルト商品や外食としてのバリエーションの豊富さがあります。カレーは家庭、学校、社食、専門店などさまざまなシーンで登場し、日本の「準主食」とも言える存在になっています。


「カレーライス物価」の上昇が示すもの

しかし近年、その“国民食”カレーにも、物価高の影響が顕著に現れています。
株式会社カカクコムが提供する価格指標「カレーライス物価」によると、2025年3月の全国平均価格は421円。これは前年同月比で約33%上昇しており、12か月連続で過去最高値を更新中です。

この物価上昇の主因は、以下のような複合要因にあります:

  • コメ価格の上昇(2024年は前年比20%以上の値上がり)
  • 牛肉や玉ねぎなど主要食材の価格高騰
  • 電気・ガスなど光熱費の上昇
  • 包装資材・輸送費の増加


カレー専門店も苦境に—過去最多の倒産件数

こうしたコスト増は、飲食業界にも深刻な影響を及ぼしています。東京商工リサーチによると、2024年のカレー専門店の倒産件数は13件と、過去最多を記録しました。
特に中小規模の店舗では、値上げによる客離れと、原価率の上昇という“板挟み”に苦しんでいます。


食卓を揺るがすインフレの波

日々の食卓においてカレーは「安心価格の定番メニュー」として親しまれてきましたが、いまやその“定番”の維持が難しくなりつつあります。物価上昇は一過性ではなく、今後も継続的な価格上昇が見込まれる分野も多く、家計への影響は決して小さくありません

カレーライスという身近な一皿を通じて、私たちはいま「食のインフレ」とどう向き合っていくべきかを問われているのかもしれません。