「トランプショック」はどうなる?過去のショックとの比較と考察【コラム】
こんにちは!
本日は日曜日ですが、臨時でコラムを投稿します。
2025年4月2日、トランプ大統領が発表した新たな「相互関税」政策が、世界中の市場に激震をもたらしています。内容は、すべての輸入品に一律10%の関税を課すほか、米国の貿易赤字が特に大きい国(中国、日本、EUなど)には、さらに高い追加関税を課すというものです。具体的には、中国には34%、日本には24%の追加関税を課す内容となります。
この発表を受け、世界の投資家たちは不安を募らせ、株価は急落。S&P500指数は4月4日に5,074ポイントまで下がり、2月に記録した史上最高値の6,144ポイントから17%以上の下落となりました。

(出所) Investing.comのデータを元に武田真美が作成
このグラフを見ると「過去最大級の下落なのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、実はそうではありません(※2025年4月4日現在では)。
過去55年の間に起きた数々の経済ショックと比較して、『今回のトランプショックがどの程度のものになるのか?』について今回は考察したいと思います。
もくじ
コロナショック (2020年2~3月)
記憶にまだ新しい5年前のコロナショックです。未知のウイルスとそれにより引き起こったパンデミックの深刻さに投資家が気づき、マーケットもパニックになりました。S&P500は、たった1ヵ月で34.0%も下落しました。

(出所) Investing.comのデータを元に武田真美が作成
サブプライム問題~リーマンショック (2007年10月~2009年3月)
サブプライム問題は、米国での住宅ローンの不良債権が原因となった金融危機です。2007年に住宅バブル崩壊から始まり、翌年2008年にリーマン・ブラザーズが破綻する「リーマンショック」が起こり、史上最大の企業倒産により世界経済にとって深刻な打撃となったのです。S&P500は、約1年5ヵ月をかけて56.4%下落しました。

(出所) Investing.comのデータを元に武田真美が作成
ITバブル崩壊~同時多発テロ (2000年3月~2002年10月)
ITバブル崩壊は、2000年にピークを迎えたドットコム企業の過大評価が引き起こした危機です。さらに翌年の2001年9月11日に起きた同時多発テロにより、IT企業だけでなく伝統産業も打撃を受けました。S&P500は、約2年半で49.1%下落しました。

(出所) Investing.comのデータを元に武田真美が作成
ブラックマンデー (1987年10月)
ブラックマンデーは、1987年10月19日にS&P500がたった1日で20.5%急落した歴史的な暴落で、プログラム取引とパニックが主因でした。この出来事は、市場の自動化がもたらすリスクを浮き彫りにした象徴的な事件となりました。S&P500は、1987年8月につけた史上最高値から2ヵ月弱で33.3%下落しました。

(出所) Investing.comのデータを元に武田真美が作成
第一次オイルショック (1973年10月~1974年9月)
第一次オイルショックは、1973年10月に中東の石油産油国からの石油禁輸による価格急騰が引き起こした経済危機です。米国ではインフレ率11%超と急上昇し、同時に景気後退となりスタグフレーションを招きました。S&P500は、1973年初頭につけた史上最高値から約1年9ヵ月で48.2%下落しました。

(出所) Investing.comのデータを元に武田真美が作成
まとめ
今回のトランプショック(2025年4月4日現在)と過去55年間に起きた経済ショックと比較した表を以下にまとめました。
経済ショック | S&P500 最大下落率 | 下落期間 | 下落から元の水準に戻るまでに要した期間(停滞期間) |
トランプショック | 17.4% (2025年4月4日現在) | 2025年2月~4月 (現在進行中) | ??? |
コロナショック | 34.0% | 2020年2月~3月 (1ヵ月) | 6ヵ月 |
サブプライム問題 ~リーマンショック | 56.4% | 2007年10月~2009年3月 (1年5ヵ月) | 5年6ヵ月 |
ITバブル崩壊 ~同時多発テロ | 49.1% | 2000年3月~2002年10月 (2年半) | 7年2ヵ月 |
ブラックマンデー | 33.3% | 1987年8月~10月 (2ヵ月) | 1年11ヵ月 |
第一次オイルショック | 48.2% | 1973年1月~1974年10月 (1年9ヵ月) | 7年6ヵ月 |
トランプショックは進行中なのでS&P500が今後もまだ下落する可能性がありますが、もし4500~2000ポイントまで下落した場合は以下のようになります。
S&P500の価格 | トランプショックにおける下落率 | 注記 |
4500 | 26.8% | S&P500の過去ワースト10の下落率入り |
4000 | 34.9% | ブラックマンデー、コロナショック超えの下落率 |
3500 | 43.0% | 2020年末(約5年前)と同水準まで下落 |
3000 | 51.2% | 第一次オイルショック、ITバブル崩壊~同時多発テロ超えの下落率 |
2500 | 59.3% | サブプライム問題~リーマンショック超えの下落率 |
2000 | 67.4% | 2015年頃(約10年前)と同水準まで下落 |
実は、55年間でなく100年間まで過去を遡ると、もっと深刻な市場の下落が存在しました。それは1929年に発生した『世界大恐慌』です。この危機は、1929年10月の株価暴落(ブラックサースデー)を起点に始まり、当時のS&P指数が31.92から4.40まで86.2%下落し、歴史上最大級の金融危機となりました。1932年にようやく底を打ったものの、そこからの回復も一筋縄ではいきませんでした。ルーズベルト大統領の「ニューディール政策」によって徐々に持ち直しましたが、1937〜1938年には再び大きな下落(二番底)が発生。市場が本格的に回復するには、第二次世界大戦の勃発まで待つ必要があったのです。この世界大恐慌は、経済や市場がいかに脆弱であるかを示す歴史的な教訓として、今なお語り継がれています。
今回のトランプショックがどこまで深刻な影響を及ぼすのかはまだ分かりませんが、世界経済への波及効果を含めて、今後の動向から目が離せない状況がしばらくは続きそうです。
