花粉症と経済 ('26/3/9号)
春先になると多くの人々を悩ませる花粉症は、日本ではすでに広く認知された季節性疾患となっています。環境省の調査や気象会社の予測によれば、スギ花粉の飛散量は年ごとの気象条件によって大きく変動し、地域によっては平年比で2倍以上となる年もあります。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会などの推計では、日本人の約40%前後がスギ花粉症を抱えているとされ、いまや国民病とも言える存在になりました。

花粉症がもたらす経済的損失
花粉症の影響は健康面だけにとどまりません。くしゃみや鼻づまり、目のかゆみなどの症状は集中力や作業効率を低下させ、職場での生産性に影響を及ぼします。関西大学の宮本名誉教授などの試算では、労働生産性の低下や外出控えによる消費減少などを含めた花粉症による経済損失は、1日あたり約2,000億円超規模(労働生産性の低下に焦点を当てた試算)に達する可能性があると指摘されています。特に重症者では作業効率が大きく落ちることが知られており、社会全体の経済活動にも少なからず影響を及ぼしています。
森林政策と現代社会のジレンマ
スギ花粉の大量発生の背景には、日本の森林政策があります。戦後の木材不足を補うため、1950年代以降にスギやヒノキの人工林が全国的に拡大しました(林野庁)。その結果、現在では日本の森林の約4割が人工林となり、その多くが花粉を大量に放出する成熟期を迎えています。こうした歴史的経緯が、現代の花粉症問題の一因となっています。この時期の通院や薬、マスク、眼鏡などの対策グッズ・機器費用は一見すると出費に見えますが、体調を維持し仕事や日常生活のパフォーマンスを守るという意味では、個人の生産性を支える重要な「自己投資」とも言えるでしょう。



