『おばあさん仮説』とは?人類が“長生き”を手に入れた理由 ('25/10/20号)
日本の高齢者は世界的に見ても非常に活動的です。総務省の「労働力調査(2024年)」によると、65~69歳の就業率は男性で約60%、女性で約45%。平均寿命も女性87.1歳、男性81.1歳と世界トップクラスで、まさに「パワフルシニア」の国といえます。しかし、生物学的に見ると「老後」という概念そのものが非常に珍しい現象なのです。

生存競争の中で進化した人間
多くの哺乳類は、生殖可能な年齢を過ぎるとすぐに寿命を迎えます。老化して体の機能が低下すると、生存競争で不利になるからです。ところが、人間は生殖を終えた後も数十年にわたって生き続けるごくわずかなの種の一つとされています。これを説明する理論のひとつが「おばあさん仮説(Grandmother Hypothesis)」です。この仮説は、1990年代に米国ユタ大学の人類学者クリステン・ホークスらが提唱しました。彼らは、タンザニアのハッザ族を観察し、祖母が孫の食料採集を助けるほど、子どもの生存率が上がることを発見したのです。
家族の絆による進化
つまり、おばあちゃんが子育てを支援することで、お母さんはより多くの子どもを産み育てる余裕ができる。それが結果的に種の繁栄に貢献したという進化的メリットなのです。人間の赤ちゃんは他の動物と比べても非常に未熟で、長期間にわたる手厚い養育が必要です。そんな子育てを支える「おばあちゃんの存在」は、社会全体を支える進化の仕組みでもあります。現代でも、祖父母が育児を手伝う家庭では母親のストレスが減り、出生率も高まる傾向があるという研究結果もあり、人類が“長寿”を手に入れた背景には、今もなお続く「家族の絆による進化」が息づいているのです。




